COLUMN
2016.08.09

部下の仕事への責任感を育てるのに必要なコト。天才外科医・天野篤の熱い思い

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お悩み相談4:部下の仕事に対する責任感が足りない

shutterstock_270855800……とにかく! 今後二度とこういう事態を招かないよう、注意してくれ!

shutterstock_331652684_ayamariはい、すみません……。

F41私は数件電話を入れてから直帰するから、君は先に帰りなさい。

shutterstock_331652684_ayamariはい、すみませんでした…………。失礼します……。

F42ふぅ、まったく。

F35そこの方、何をお怒りですか?

F41ん? 何ですか、あなたは?

F38私は仕事人コンシェルジュ。プロフェッショナル達の言葉を借りて、悩める方の助けとなることを目指しています。まあとにかく、そんな怒ったまま電話しては相手にも伝わってしまいますよ。10分もかかりませんし、一度ここで話してみては?

F45…………そうですね。実はさっきのは私の部下なんですが、あれが今の悩みの種でして……

Dさん(35歳・保険営業)

彼女は今年入ったばかりの新卒なんですが、とにかく保険営業という自覚が足りていません。信用が第一の商売なのに、お客様との面談に何度も遅刻して、一向に改善の兆しが見えません。

ほかにもこの仕事のことを本当に理解しているのか分からないような言動が多く、今なんてお客様の契約書を喫茶店に忘れてたんですよ!店長がすぐに気づいて保管しておいてくれたから良いものを、大問題になるところでした。個人情報の扱いにはあれほど注意するように研修で言ったのに……。

とにかく、信用が命の生命保険営業として自覚が足りなさすぎるのが問題です。仕事への責任感が不足しているんでしょうね。採用のときは私が面接官を務めた子で、能力は高いと思うので期待はしているのですが……。


F36ふむふむ。おおよそ理解できました。それであれほど怒ってらっしゃったのですね。個人情報の流出などがもし起こったら、会社の信用を大きく損なうことにつながりますから。

F43はい、そうなんです……。

F37問題は、仕事への責任感、ですか。ではあなたにぴったりの仕事人は、心臓外科医・天野篤さんですね。

44心臓外科医、ですか?

天野さんは1983年に日本大学を卒業後、どこの医局にも属さずに腕を磨いてきた名医です。2012年には、天皇陛下の心臓バイパス手術を執刀したことで話題となりました。彼の特徴は、その特異な経歴だけでなく、何よりもその、“プロとしてのこだわり”。仕事への責任感という意味では、大きな示唆が含まれているでしょう。

自分が仕事をする上で背負っているもの

F38天野さんは“世のため、人のため”という熱い思いを持った医師として有名ですが、その思いがさらに強まったのは彼が35歳の頃。自分も立ち会った手術の失敗によりお父様が亡くなったことでした。天野さんが直接執刀をしたわけではないですが、このことは天野さんに強い衝撃を与えたと言います。

F45それは辛かったことでしょう……。

F39しかしそれを糧に、天野さんは奮起。研鑽を重ね、オフポンプ手術という、心臓を動かしたままおこなう手術の第一人者とまで呼ばれるようになったのです。著書『熱く生きる』で彼はこのように述べています。


自分の父親を、医師である自分が立ち会った手術で失うということは、これまでの自信も経験も何もかも消え、無力感だけにさいなまれた。だが、そこで立ち止まっていることは許されない。だからこそ、そこからの私は死にものぐるいで、ひたすら心臓外科医としての腕を磨いてきた。「もう失敗はするなよ」という父の思いによって、今の私はある。ほかの心臓外科医とは背負っているものが最初から違う。ある意味では、父の魂を背負って今を生きているのだ。

『熱く生きる』P61


F47なんとも気迫に満ちた方ですね。しかしながら、私の悩みと何かそれが結びついているのでしょうか。

F35逆に質問をしていいでしょうか?あなたはどうして保険営業の仕事をされているのですか?

F46それは……私が学生の頃に兄が事故死したのですが、そのときに保険会社の方が親身に相談に乗ってくれたのが大きなきっかけですね。私も辛い経験をしたご家族を支える仕事をしたい、と感じたのです。

F38それは大きなできごとでしたね。天野さんもあなたも、そのように自分の仕事を支える“強い思い”を作った経験を持っています。そしてそれが自分の仕事への責任感を支えているのでしょう。あなたの部下はまだその経験をしていないかもしれませんが、いつかその強い思いを持つ日がきっと来るはずです。焦ることはありません。

自分の仕事の道を見つけ、それを示す

F45なるほど……。この職業はお客様と密に触れ合う職業です。確かに、いつか彼女に自分の仕事の意味を自覚するできごとがあるかもしれませんね。しかし、それまで何も手を打たずにいるのは上司として失格ではないでしょうか。

では、まずあなたが考える“保険営業”の心得を彼女に共有してみてはいかがでしょう。“保険営業”とはどんな仕事なのか、あなたの主観で良いので定義してあげれば、きっと彼女の行動指針ができるはずです。天野さんは武士道から派生した「医師道」という言葉を使い、それについて次のように述べています。


①医師はみずからを生きやすくするために易きに向かってはならない。
②医師は自分の業に誇りを持ち、修行に対して達成感とともに幸福感を持つ。
③医師は患者の苦痛、病、生死の境に対して、逃避する行動をとってはならない。
④医師は患者の老若(幼)、性別をいい訳にしてはならない。
⑤医師は自分の身に着けた経験を遍く、差別なくほどこさなければならない。
⑥医師は社会制度に即した医療を行うことを原則とするが、医療改革(=患者・医師双方が納得できる医療の追求)の志を持たなければならない。
⑦医師も人なり。医療の現場で個人が保護されるような環境は、みずからの努力で獲得しなければならない。

『熱く生きる』P239

F42“医師道”ですか。確かに私にも未熟ながらそう言った仕事での指針はありますが、それを若い彼女に押し付けるのは、自主性を奪うことになりませんか?

F35まずは教えを忠実に守り、次に逆らい、最後には自分なりのやり方を習得する“守破離”という考え方がありますが、まずは彼女に保険営業としての“守破離”を教えるのが先決ではないでしょうか?

技量よりも、「準備」「思い」「プライド」が熟成した時にチャンスを与える

F47そうですね……では一度自分の中で、保険営業としての要件を固めてみるとします。では最後にお聞きしたいのですが、いつになったら彼女に仕事を任せていいか判断するべきでしょう。ミス続きの現状では、到底仕事を任せられるに至りません。

いつまでも先輩や上司が付いていられるわけではないとはいえ、やはりいざ仕事を任せるとなると確かに不安ですよね。それについても天野さんは、部下の医師に求める条件として次の3つをあげています。


①心身ともに、手術への準備を怠りなく重ねている
②患者さんについて、「自分がいちばんよく知っている」という思いを持っている
③そのプライドを、患者さんを含めた周囲にさりげなくアピールできる。

『熱く生きる』P185


F38彼が言うには、部下に執刀を任せるにあたり重視するのは、その技量よりも準備や思い、そしてプライドとのこと。

F49つまり、彼女を独り立ちさせるのは彼女の仕事人としてのマインドが育ちきったときということですね。なるほど、納得しました。ありがとうございます。

プロフェッショナルとして、仕事に対する思いを高めていく

F49天野さんの言葉は、部下ももちろんですが、私自身の仕事に対する向き合い方についても問いかけてくれますね。初心を忘れず、責任感を持って私も今の仕事と真摯に向き合っていきます!

F34仕事への責任感というのは、一朝一夕で身につくものではありませんが、だからこそ、すぐに消えるものでもありません。天野さんが30年以上の医師生活で思いをどんどん強くしていったのと同じように、あなたも、あなたの部下も仕事への思いがどんどん強くなっていくのではないでしょうか。

F50はい。焦らずに、私も部下も二人で真のプロフェッショナルに近づけるよう努力していきます。ありがとうございました!

参考文献:天野篤著『熱く生きる』

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