INTERVIEW
2016.10.25

教来石小織×中村真一郎【後編】周りがいつの間にか助けてしまう。リーダーとしての資質

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「リーダーの資質とは」

この議題には様々な意見が上がるだろう。「カリスマ性」「傾聴力」「行動力」「誠実な姿勢」……。

その中でも、特に近年注目されているのが「巻き込み力」である。自分ひとりで物事を解決させるのではなく、内部も外部も説得して、多くの人の力を借りて事業を大きくしていく。そこにはどれだけ卓越した人間でも実現できない、“相乗効果”が生まれる。

ウィンコーポレーション代表取締役CEO、中村真一郎氏と、カンボジアに映画を届けるWorld Theater Project(NPO法人CATiC)代表、教来石小織氏のリーダー同士の対談。後編ではふたりのリーダー論や組織論をお届けする。

前編:教来石小織×中村真一郎【前編】「カンボジアの子どもたちに映画を」。大きく拡がった、“ふつうの派遣社員”の夢

なぜ無給で人が動くのか。リーダーではなくビジョンの下に人が集まった

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中村真一郎氏(以下、中村):
今、教来石さんの所属するWorld Theater Projectは現在どのような組織体制で運営されているのでしょう?

教来石小織氏(以下、教来石):
移動映画館を行っているカンボジアには、現地マネージャーを務める日本人駐在員が1名と、「映画配達人」と呼称しているカンボジア人スタッフがシェムリアップ州とバッタンバン州に3名ずついます。彼らが週二回のペースで、村々を回って映画を上映しています。

カンボジアでの活動を持続させるため資金を集める必要がありますので、日本ではファンドレイズや広報が主な活動です。その一環として、「先進国の人が映画を楽しんだら、途上国の子どもに映画が届く」仕組みをつくるため、「Filmeet(フィルミート)」と称した映画イベントを行っています。映画上映会、映画のプレゼン大会、映画の専門家によるトークショー、映画に出てくるご飯を作って食べようなど、映画に関する様々なイベントです。今まで東京だけで行っていたのですが、2016年夏から大阪でも開催されるようになりました。

映画イベントを楽しんでもらう中で、カンボジアでの活動のことを知っていただくきっかけも作っています。イベントに来てくださった中には、継続的に活動を支援してくださる寄付会員になってくださる方もいます。

また、「映画配達人」を体験できるスタディツアーも企業様と協業して実施しています。こうした国内での活動はすべてボランティアメンバーが運営しています。関東に約20名、関西に約10名。学生と社会人のメンバーで構成されています。社会人の方が多く、普段の仕事は企業の経営企画室で働いている方、SE、税理士の方など様々な職種の方が集まっています。

中村:
カンボジアと日本で、組織体制ができていることに驚きます。しかも日本人は皆ボランティアで無給で動いているのですね。どのようなリーダーシップで今の状況を作ってこられたのでしょうか。

教来石:
私は言い出しっぺなので”代表”をやらせていただいてはいますが、まったくもって組織を引っ張っていく“リーダー”ではありません。今の状態も、メンバーたちが築き上げてきてくれました。カンボジアでの体制も、2015年秋に大学生メンバーが駐在を決めて、現地スタッフを見つけてあれよあれよという間に広げていきましたし、日本での組織もリーダータイプのメンバーがまとめてくれて、正直私がいなくても回っています(笑)。

「人望がある」「リーダーシップがある」と言っていただくことがあるのですが、まったくそんなことはないのです。みんな私個人についてきているというよりも、「途上国の子どもたちに映画を届ける」という活動内容や、「生まれ育った環境に関係なく子供たちが人生を切り拓ける世界をつくる」という団体の理念に賛同して活動してくれているのです。私ではなく、ビジョンの下に人が集まっているだけなのです。

中村:
リーダーがビジョンを語ってお金がなくても働くメンバーがいて……というのは、創業時のベンチャーのあり方に似ている部分がありますね。今までNPOと企業はまったく別物だと思っていましたが、内容を聞いていると、実はNPOはベンチャーと近いものなのかなと思います。

教来石:
私は今まで、好きだった映画に影響されていろいろな夢を思い描いてきました。お花屋さん、ケーキ屋さん、弁護士、獣医、刑事、映画監督、探偵……。そんな風に、もし私が目指している夢が私自身のための夢だったら誰も応援してくれなかったでしょう。

でも、この「カンボジアの子供たちに映画を見せたい」という夢は、私ではなく、ほかの大切なもののための夢。だから、彼らは動いてくれるのです。

“ひとりでできる”リーダーと、“周りが助ける”リーダー

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中村:
私は“夢”についてあまり語ることはしませんが、現在の目標は、頑張る人を応援する企業をつくることです。

創業したきっかけはシンプルに「お金持ちになりたい」だったのですが、しだいに変わってきて、今は社会のために自分が何をできるか考えています。

教来石:
「他者のために」……。マズローの5段階欲求(※)で最も高次の「自己実現欲求」を満たされた方はそのような考えになると聞きます。成功された多くの経営者の方はそのように「他者のために」という意識を持たれるのかもしれませんね。

※…人間の欲求を表したもの。低次の欲求より順に、「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「尊厳欲求」「自己実現欲求」。

中村:
経営者と一口に言っても、いろいろなタイプがあります。私はいろいろな業務をできる限り自分でやりたがるほうなのですが、そうやってひとりでやることで下の人間が育たないというリスクが生まれます

また、一人の人間でそれをこなすには、どうしても限界が来る。人の“器”と言いますか……。他の人間も巻き込んで、権限を最適に配置していかなければならないなと最近は考えているところです。

教来石:
ひとりで何でもできる方を尊敬しています。私は一番信用できないのは自分自身で(笑)、締切も忘れるし、Googleマップも使いこなせないので初めての場所に辿りつけない。英語も話せないので、一回一回メンバーに英文メールを翻訳してもらなど、本当に迷惑をかけています。謙遜でもなんでもなく、努力不足ですし、情けないですがひとりでは本当に何もできません。メンバーは私に近づけば近づくほど、苛立ちと殺意を覚えているかと思うのですが(笑)、メンバーには心から感謝しています

中村:
教来石さんはいわゆる「人たらし」タイプの経営者に近いのかもしれませんね。仲間が、「俺らがしっかりしなきゃダメだ」と自然に思えるような。そういう経営者を何人も知っています。思うに、それこそが組織を大きくしていくうえで重要なリーダーの資質ではないでしょうか。

巻き込んだ者の責任。“夢”の実現に向けて、行くところまで行くしかない

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中村:
組織というものは大きくなって次のステージに行くときに必ず“壁”にぶつかります。もしかすると教来石さんの組織は、今ちょうどそのタイミングになろうとしているのではないでしょうか。認識の違いに気づかされたり、方針を変えざるを得ないこともあるでしょう。

教来石:
今までも、NPOとして次のステージに移るタイミングで、痛みを伴ってきました。私は良くも悪くも平和主義というか、「嫌われたくない」「みんな仲良くやろうよ」というタイプでしたので辛い時期でした。けれど痛みを伴っても変えていかなくては突破できない壁がありました。様々な選択を迫られてきた中で、出した結論がそれぞれ正しいかはわからないのですが、正解にするまでやり続けていかなくてはいけないのだと思います。

関わってくれたメンバーや支援者の皆様が、何のために時間やお金や想いを費やしてきたのかと考えると、行くところまで行かないと申し訳が立たないのです。カンボジアを始めとして、世界中の子どもたちが当たり前に様々な映画を観られる環境をつくっていきたい。巻き込んだ者としての責任もありますが、これから先どんなことがあっても、この想いは死ぬまでぶれることはないのだと思います。

教来石小織World Theater Project(NPO法人CATiC)代表。派遣社員をしていた2012年に「カンボジアの子どもたちに映画を見せたい」と思い立ち、現地での移動映画館を開始。現在まで20,000人以上のカンボジアの子供たちに映画を届けている。2015年2月におこなわれた「みんなの夢AWARD5」優勝。2016年に『ゆめの はいたつにん』(センジュ出版)を出版。

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