INTERVIEW
2016.12.06

FinTechが空気のような存在になる。そんな未来の話【株式会社メタップス 佐藤航陽】

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2015年から2016年、急速に世に広まった「FinTech」。Finance(金融)+Techonology(技術)を合わせたこの造語の定義は、一般に、ITを活用した革新的な金融サービス事業を指します。具体的には、ベンチャー企業を中心に提供されているスマートフォン決済システムやビットコインなどが当てはまります。

株式会社メタップス代表、佐藤航陽氏は「将来、FinTechは“空気”のようになる」と語りました。江戸時代にはなかった「電気」がいつの間にか当たり前のものになったように、「FinTech」が生活のインフラの一つになる日も近いと言うのです。

メタップスは「テクノロジーでお金の在り方を変える」をミッションに掲げるIT企業です。アプリ収益化サービス「metaps」やオンライン決済サービス「SPIKE(スパイク)」など幅広くテクノロジーサービスを提供し、現在では、お金の流れを予測する人工知能「Laplace(ラプラス)」の研究開発を進めています。2016年10月には、みずほ銀行との提携を発表し話題に。今まさにFinTech領域で注目を集める企業のひとつです。

FinTech最前線にいる企業の代表が予測する、「FinTechが空気のようになる未来」とは?

FinTechが普及し、最終的に金融業はなくなる

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佐藤航陽(さとう・かつあき)
1986年生まれ。株式会社メタップス代表取締役社長。2007年早稲田大学在学中にイーファクター株式会社(現・メタップス)を設立。世界8拠点で事業展開しており、2015年、マザーズ上場。2016年、フォーブス「30 Under 30 Asia(アジアを代表する30歳未満の30人)」に選出。

—“FinTech”という言葉をよく聞くようになってからおよそ2年。今では数多くの関連本やweb記事が溢れ、FinTechは単なる一過性の言葉ではないという印象を受けます。佐藤さんはFinTechの定義についてどうお考えですか?

“FinTech”という言葉の定義自体には全く意味がないと思っています。そもそも、私たちが決済事業を始めたときは、“FinTech”という言葉はありませんでした。私たちの取り組みが「いつの間にか“FinTech”という枠組みの中にくくられていた」というのが正直な感想です。

古い話になりますが、“web2.0”(※)が近い言葉だと思っています。「よくわからない新しいもの」を言葉で表しているけれど、実は誰もよくわかっていない。だから定義は重要ではないと考えています。

(※)web2.0:2000年代中頃から登場し始めた、次世代のweb技術を総称した言葉

—なるほど。2017年のFinTechはどうなっていくと思われますか?

どれがマネタイズできるのか、事業として成り立たないのかはっきりしてくる時期だと思います。現に、アメリカではペイメントやレンディングの分野に注力し始めていることが昨今の流れから見えてきました。2015年から2016年は企業にとって、何が「当たり」か見極める、投資の時期。2017年からはその投資をもとに収斂していく時期になるでしょう。

—そのアメリカではつい先日、ドナルド・トランプ氏の大統領選勝利が報道されました。

そうですね。トランプ氏は他国への不信感から、Apple製品などを国内で製造させる発言をしています。これではアメリカの力が「弱まっていく」というか、テクノロジー業界に関しては他国の後ろ盾を失いつつあると言えるでしょう。

そういう意味では、アジア勢にとってはチャンスと言えるかもしれませんね。実際、中国やインドの企業は着々と力をつけています。この2国を抱えるアジアがこれからFinTechの中心になっていくような気がしますね。

—その流れの中で、これからFinTechはどのようになると思われますか?

FinTechは、あって当たり前の、“空気のような存在”になるのではないでしょうか。

今、電気を使わず事業をおこなっている会社はほとんどありませんよね。インフラの一つとして受け入れられている。それと同じで、金融やインターネットも使わない人はほとんどいないため、企業はその機能を取り込まないとマネタイズができなくなってくる時代が必ず来ます。現に、ソニーやトヨタ、セブンイレブンなど、製造や小売の企業も金融に進出してきています。

僕は最終的には金融業がなくなると考えています。銀行は専業ではなくなり、小売や製造などを始める一方で、小売会社や製造業は金融機能を持ち始める。両者の境界線はしだいになくなっていくと考えています。

—脅かされる業界はありますか?

そもそもバーティカル(垂直)に業種を切っていくこと自体が間違いだと捉え直さければならない時期に来ています。ドイツ政府が実施している“インダストリー4.0” (※)のように、バリューチェーンを統合しなくてはなりません。データをもとに、今までの産業構造区分を捉えなおすのです。それができない会社は自然淘汰されていくでしょうね。

(※)インダストリー4.0:人工知能やIT技術とモノづくりの現場を連携させた、「スマート工場」を実現させようとする動き。

例えば物流業であれば、EC事業を組み込んだりするのも手ですね。商品がコモディティティ化して価格で差別化できなくなった。そのときに差別化できるのが、物流の仕組みです。現にAmazonはEC事業の会社ですが、物流業も担い、物流業界を揺るがしています。では逆に物流業がEC事業を始めるというケースがあってもいいのではないでしょうか。そうやって業種を水平的に見て動かなければ未来はないかもしれません。

「夢のようなこと」と言われてもいい。なぜならそうやって成長してきた会社だから

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ーではここからは、メタップスの事業について話を進めていきます。先日発表された「中期経営方針」に『次世代の新しい金融機関のロールモデルを作る』という文言がありましたね。

今、銀行が主にやっているのは窓口業務で、人力でやっている業務がほとんどです。もしそれがオンラインで効率化できるのであれば、全く違う金融のかたちができます。

理想としては、すべての銀行業務や証券業務をスマートフォン上だけでできるかたちを目指しています。その面では中国が一番進んでいて、すでにスマートフォンから様々な決済や、証券・投資信託・保険の購買などできるようになっています。2020年までは日本もそこまでたどり着くと私は思っています。

ー2016年10月には、みずほ銀行と業務提携したことも発表されました。

みずほ銀行という、約2,000万口座というユーザーデータを持つ日本最大の金融機関と提携することで、私が描いている「データノミクス構想」(※)はかなり実現に近づくと見ています。

(※)データノミクス構想:事業で得られたデータをAIに反復学習させることで経済を成長させるという、メタップスの成長戦略

—みずほ銀行とはどのような関係を構築しようと考えていますか?大手金融機関とベンチャー企業が組んだときによく懸念されるのが、ベンチャー企業が単なる下請け業者のようになってしまうことだと聞きます。

実際、大企業とベンチャー企業が組んだ場合、安価なSIer(※)のようになっているケースも多々あります。ですが、今回私たちはお互いが一つのサービスを作るという方針でやっていこうと決めています。どちらか一方の業務を効率化するという話ではなく、全く新しいサービスを協同でゼロベースから作っていこうという方針です。

(※)SIer:情報システムの企画から保守運用まで一括して請け負う通信企業。システム・インテグレーター

—個人的な意見ですが、「データノミクス構想」や「金融機関の新たなロールモデル」などメタップスが描く大胆な構想を見ていると、佐藤さんが徹底して“未来志向”の考え方をしているように感じられます。

そもそも、私は社会のロジックそのものが不完全だと思っています。確かに、情報が分断されていた過去の時代はロジックが役に立っていました。既存の見えているものから筋道を立てて将来を予測していくという手法は有効だったと言えます。

しかし現代、ここまでヒトとヒト、モノとモノが繋がりすぎた世界においては、今見えているものから将来を予測してもほとんど外れてしまうと感じています。そのため、「未来そのものは不確実」という前提で意思決定をしなければならないのです。つまり、「ロジックの破綻」が一時的に起こらざるを得ないと考えています。

今回の大きな提携にしても、どの会社かはわからなかったけれど、どこかは来るだろうなと予測していました。時代の要請と言うか、世の中自体がそう動いていくのでそうならざるを得ないな、と。ピンポイントで予測はできないですが、全体の流れを見て、そこに張る。

だから、私のやることは、全員を納得させるものでもなければ、“ロジカル”だと言われるものでもありません。2007年に起業した時も2011年にシンガポールに展開しようとした時も、周りの反対がありました。私は説得材料を持っていなかったのですが、実際にやってみる判断をしたところ、結果が出て、自分が言っていたことが正しかったと後から証明されてきました。

「夢のような話だ」と言われることもありますが、そうやってメタップスという会社は成長を続けてきたのです。

『お金』は自然そのもの。『感情』は身を守るためのロジック。『テクノロジー』は副産物。

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—起業されて間もなく10年。当時描いていた「10年後」と「今」、ギャップはありますか?

比較的近いですね。10年前、私はきっと金融業をやっているだろうと思っていたので。なぜなら、「経済の仕組み自体が今の時代と合っていない、もっといい経済システムができるのでは」と考えていたからです。その課題を解決するような業務——つまり『経済』に一番絡む『お金』=金融業をやっているだろう、と。

ブログを拝見すると、佐藤さんはその『お金』、そして『感情』『テクノロジー』の3つが相互に影響して未来を決めていると考えられていますね。『お金』のベクトル、『感情』のベクトル、『テクノロジー』のベクトルを結んだ中間が“現在”で、その先が“未来”だと。

2010年頃からぼんやりと考えていましたね。事業を進めていく中で、要素をまとめるとこの3つになるのかなと。今でもずっとその3要素については考えていて、最近はもう少し深堀りしています。

—詳しくおうかがいしてもよろしいですか?

『お金』は世の中に内在する力で、自然の仕組みそのものです。社会主義が失敗する一方で資本主義が成立したのも、資本主義が弱肉強食で、自然によく似ているからだと感じています。

『感情』は、人間が世界の残酷さから身を守るために作ったシステムだと思っています。もともとは、「身を守りたい」という反射的なロジック。そして倫理や道徳は、社会の感情の表出です。実は、昔の物理学者や数学者も数学的なアプローチから同じことを考えていました。ライプニッツやラプラスなどが有名ですね。それに気づいた時は、「みんな世界をシンプルに説明したかったんだな」と感じました。

『テクノロジー』は、自然と社会が重なりあった瞬間にギャップを埋めるための副産物と捉えています。文明や人間が進化する時に、結果として発生するものです。FinTechを支える技術も、世界の仕組みを変えるための手段のひとつなのです。

—面白い考え方で、非常に勉強になります。では最後に、FinTechという視点から見て、これからの世界について考えていることをお聞かせください。

ここ4年くらいは既存の金融機関が抜本的に変わる瞬間かなと思っています。金融に限らず、“リアル”ベースだった事業が“スマートフォン”ベースになるというのは全ての業種でおこなわれていくでしょう。

編集後記

佐藤氏は、自然の仕組みそのものである『お金』のあり方を、テクノロジーを通して変えようとしています。「FinTechで世界は変わるのか?」ではなく、「世界を変えるためにFinTechがある」のです。

私たちは、佐藤氏がFinTechを通して描いた未来を、いずれ目の当たりにすることでしょう。

メタップスの事業についてはこちら:データを軸に経済を変える。メタップスが描く、一歩先のビジネスモデル

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