INTERVIEW
2016.12.20

片山裕子×中村真一郎【前編】現役CAが経営に取り組んだら、“憧れの世界”よりもずっと広い世界が見えた

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あなたはCA (キャビンアテンダント)についてどのようなイメージを持っているだろうか?空港でしか会うことのできない彼ら、彼女ら……。自分とは別世界の人間のように思っている人もいるかもしれない。

実際、熾烈な競争を勝ち抜き、憧れの航空業界に入ったCA達の能力は世界のVIPを相手にすることで培われた、CA達のコミュニケーション能力や語学力……。一般の企業にとっては、機会があれば是が非でも採用したい人材だろう。

しかしながら、CA自身は、実はその魅力に気づいていないと、自身も現役CAである株式会社AirSol代表、片山裕子氏は語り、次のように表現した。

「CAは、野球選手と似ている」

2015年10月に設立された株式会社AirSolは、“異文化の橋渡し”を掲げ、現役CAのスキルセットをビジネスのソリューションとして企業に提供している。世界で初めて、CAのアウトソーシング業務を始めた経営者は何を考えているのだろうか。

ウィンコーポレーション代表取締役CEO中村真一郎氏と、一流の仕事人との対談企画第7回。中村氏が、同じく経営者としての立場から片山氏の言葉の真意を探った。

世界初の現役CAアウトソーシングができるまで

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中村真一郎(以下、中村):
片山さんが経営されているAirSolの事業——現役CAのアウトソーシングというのは、なんともユニークですね。外資系航空会社に勤めるCAに副業を紹介するというビジネスは他に例を見ません。

片山裕子(以下、片山):
世界初のCAアウトソーシングサービスだと自負しています。私自身もAirSolを経営しつつ、フランスの航空会社でCAとして働いているので、副業をしているということになりますね。今ではすっかり経営のほうが本業のようになってしまいましたが(笑)。

中村:
日本と違い、外資系の会社は副業に関する制限がゆるいと聞いています。

片山:
そうですね。そもそも、「会社が個人の自由時間に制限をかける」という考え方自体がありません。そのため、同業他社でない限り、副業は自由に認められています。私の同僚でも、弁護士をしている人もいれば、私のように会社を経営している人もいます。ハリウッドの俳優を副業としてやっていて、もうすぐCAをやめてそちらを本業にするという同僚もいますよ。

中村:
そういう環境にいたからこそ、企業とCAの間に立って両者をつなぐ会社を作る発想に至ったのですね。

片山:
きっかけは、とあるベンチャー企業のお手伝いをしていた時に経営者とお話しし、CAが持っているけど自覚していない“価値”に気づいたことです。

経営者の方々は、語学のできる人材を求めている。また、出張というのは意外に大変に感じる人が多く、実は皆やりたがらない……。それを知った時には少なくない驚きがありましたね。

なぜなら、CAなら通常3、4ヶ国語は話すことができますし、年中世界を飛び回っているからです。世界中の、人種も宗教も異なる、あらゆるタイプの人間とコミュニケーションをとってきたことは、立派な経験であり、力です。でも、CA自身はそれを長所とすら思っていない。

両者と話して気づいたそのギャップ。これを仕組み化すれば面白いビジネスモデルができる。そう思ったのです。

経営者になって気づくこと。私がいた環境はぬるま湯だった

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中村:
片山さんは現在、外資系航空会社CAという“従業員”、そしてAirSol代表という“経営者”、ふたつの異なる立場でお仕事をされていますが、何か気づきはありますか?

片山:
気づきは本当に多いですね。まず思うのは、今まで浸かっていた環境は“ぬるま湯”だったこと。自分で自分を成長させようとアクションができていなかったと思います。

従業員しかやっていなかった頃は仕事をすごく楽しんでいるつもりでしたが、実はそれは与えられた環境で満足していただけ。今になって思うと、もっと主体的に考え、行動することでさらに仕事を楽しめたはずでした。思考停止していたのかもしれない。

経営者は常に考え続けなければいけない生き物です。ビジネスでもプライベートでも、思考停止せず、常に答えを探し続けなければならない。そこが従業員だった頃と比べると、まるで違いますね。

また、逆にデメリットというわけではないですけれど、従業員をやっていて「経営者のエゴ」を感じることもあります。私も経営をする立場で気をつけていますが、「人についてきてもらっている」ことを忘れているんじゃないかなと。そこで無駄に反発してもしょうがないのですが……。経営者は時に身勝手になってしまうものなのですね。

中村:いやいや、なかなか他の人にはできない貴重な経験をされていると思いますよ。私も別の会社で従業員として働いてみようかな(笑)。

“現役”はブランド。他社と比べたときの強みになる

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中村:
事業について少しお話を聞きたいのですが、実際にサービスを提案するとき、経営者の方々からはどのような反応が返ってきますか?私個人としては、弊社の子会社では人材サービスを展開しているので、協力すると面白いビジネスができるかもしれないと思うのですが。

片山:
まず、現役CAがお手伝いをするというサービス自体、そして私自身も現役CAだということを非常に面白がってくれますね。日本的な企業からすると外資の自由さが羨ましく映るのかもしれません。

また、私の場合、取引先への手土産をフランスやドイツで買ってくることができる。それは、すごく他社との差別化になります。また、話をするうちに、ビジネスの話だけでなく、CAが世界を飛び回りながらどんな暮らし方をしているのかにも興味を持ってくれて。ビジネスとして、「対企業」という視点ではなく、私という人間に落とし込んで考えてくれることが強いですね。

中村:
なるほど。“現役”CAというのは重要なんですね。“元”CAだと、ありふれている。取引先も、現役だからこそ話を聞く。 “現役”とは実はブランド、付加価値なんですね。

CAは野球選手に似ている。副業で違う世界への扉を開いてほしい

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中村:
近頃は副業をしていた企業から引き抜きを受けて転職するといった例もありますが、CAのセカンドキャリアについても視野に入れて事業をされているのですか?

片山:
弊社は転職までは斡旋していませんが、副業の先にそのような選択肢があるのは喜ばしいことだと思っています。

CAという職業は野球選手に似ています。小さい頃からずっとその職業に憧れていて、その世界で働けること自体が幸せ。だから、他の世界を見たことがない、見ようとしたことがないんです。そのため、退職したときに世の中にどういう会社があるかわからないし、自分たちのスキルで何ができるかもわからない。

そこで、CAの「おもてなし」の延長線上の仕事しか思いつかない。秘書やマナー講師、あるいは語学力を活かして語学講師ですね。この「語学講師」という選択肢が象徴するように、世の中の会社を知らないので、語学力を使って会社でどのような仕事ができるかイメージできないのです。語学講師という職業に就くCAは多いですし、それはまったく問題ではなく、素敵なお仕事だと思います。ただ、せっかく語学力があるのに、選択肢が「語学講師」しかないのは勿体無いと思います。語学力を活かせる場はほかにもたくさんあることに気づいていないのかもしれませんね。

だから逆に、副業で自分が持っていた価値に気づくことができたとき、とても喜んでくれます。お金を得ることよりも、自分自身を、そして世界を見ることができたことを喜ぶ人が非常に多いです。

「自分には何も特殊なスキルはない」と思っていた方でも、実はそのスキルは希少なものだと知って、「自分の強み」を見つけていく。だから私は、自信がなくて副業をするかどうか迷っている人には、とにかく「はじめの一歩」を踏み出すことを勧めています。

AirSolは、単にCAに仕事を紹介するだけにあらず。ただひたすらに航空業界で生きてきたCAの、“世界”を広げる役割を担う。

そう、“副業”は世界を広げるのだ。では、その副業を取り入れるにはどうしたらいいか。後編では“副業”について掘り下げていく。

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