INTERVIEW
2016.10.04

官僚の職務は圧倒的なインプットに支えられている。実は知られていない、霞が関のリアル

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現役で活躍する若手官僚に聞く、霞が関のリアル。前編では「官僚主義」が生まれる理由について伺ってきました。後編ではさらに現場に焦点を当て、官僚たちの実際の業務やキャリアについて掘り下げました。

民間企業とは遮断され、遠いところにいるようなイメージのある官僚たち。法案や予算案を作成し、政策を企画・実施。ときに国会議員からの質問にも回答。まさにこの国の政治を支える彼らは、何を見て、聞いて、考えているのでしょうか。

前編:『シン・ゴジラ』でも揶揄された「官僚主義」について、現役官僚に聞いてみた

世論に答えるのが議員の仕事で、それを支えるのが官僚の仕事

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—ここからは具体的な業務についてお伺いしていきたいと思いますが、官僚は非常に激務というイメージです。

確かに、責任も重いですし、多くの人のチェックが入る仕事で、重たい業務もあります。ただ、激務とは言っても、国会が開いているか閉まっているかでメリハリがあります。開会中であっても、同様にメリハリがあるので、毎日のように深夜まで業務に追われるということはありません。

国会でよく議論されるような部署であると、対応に追われる時期があることもありますが(笑)。

—「国会で質問が来る部署」というのは事前に予期できたりするのでしょうか。それによって、忙しさの予測もつくと思うのですが。

正直、マスコミで取り上げられていると、質問が来そうだなとは感じますね。やっぱりそれが世論ですし、国会議員の仕事は世論を代表して発言することですから。そして、そんな議員の先生方を支えるのが我々の仕事なのです。

“説明”のために必要とされる、圧倒的なまでのインプット

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—具体的にどのような業務をされていますか?

自分の仕事はざっくり言うと「調整」です。部下から上がってきた情報をまとめて上司に報告し、必要があればそれ以上の役職、時には議員先生にも説明します。いまは役所の全体的な取り組みについて説明できなければなりません。

—説明、ですか。

はい。そのためには、常に勉強が欠かせません。先ほど、役所の全体的なことを把握しなければいけないと話しましたが、それだけ知っていればいいというわけではありません。

上司によっては、思い入れのある分野があるので、その部分を手厚く説明してあげなければならないのです。中身よりも、役所内の誰が反対していて、誰が賛成しているかを気にする人もいて、十人十色の説明をしなくてはなりません。経験でカバーしていくしかない部分もあります。

—具体的に、どう言った点を注意されているのですか?

例えば、ざっくりとした質問が先生から来た場合を考えてください。もちろん、説明をしなければならないのですが、その時に、気をつけるのは、その先生が議員になる前に何をしていたかということや、どういう人たちの支援を受けて国会議員となったのかという“裏”の部分。

例えば、元外交官に説明するときと、元医者に説明するときでは、全く説明の仕方が変わってきます。もちろん回答は用意するのですが、その時に紙に出力したことをただ読み上げても意味がありません。どの部分を手厚く、あるいはどの部分を切り捨てて説明するのか、判断しなくてはならないのです。

—臨機応変な説明の仕方が求められるということですね。

そうなってくると、必然的に、一番細かいところまで追求する人のレベルまで勉強しなければなりません。また、上の人たちはみな、「歴史」を知っています。その制度がどのような背景をもとに発足し、どのように変遷してきたかという知識がある。それに対して現状の知識だけで対抗しようとしても難しい。本にも目を通してバックグラウンドの知識もつけなくてはなりません。

—凄まじいレベルの勉強量が必要となるのではないかと推測されます。それでも実際に、困ったことや突っ込まれたことはありましたか?

自分の役職に近い階級の上司に説明する際は、大外しはしません。「ああ、こういうことも調べてればよかったな」ぐらいですね。ただ、管理職クラスになると、全然見方が違って、「そういう視点で全然見ていなかったな」と自分の視野の狭さを痛感することもあります。

また、課長が議員の先生に説明しているときに後ろにいて、何を聞かれても絶対に答えられるようにしておかなければならないというのはプレッシャーです。例えば、大臣の質問に課長が答えられなかったとき、課長は後ろにいる私のほうに振り向くのですが、そのときには必ず答えを言わなければなりません。

それができなかったら、自分がそこにいる意味はありません。大臣との質疑応答はいつでも“一発勝負”。「また調べてきます」で済む世界ではないのです。

“キャリア組”と“ノンキャリア組”……官僚のキャリア形成

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—官僚のキャリアはどのように形成されるのですか?

入ってから3年目までは係員ですね。実際に手を動かして資料を作ったり、外部からくる質問メールをさばいたりする役割です。

入って3〜5年目になると、係長になります。係員を率いる立場になり、それぞれの係員が持っている案件についてインプットをします。係員と同等のインプットをして、やっていることをすべて把握しなければなりません。単純に、部下の数だけインプット量が増えることになりますね。

7〜10年目くらいには課長補佐になります。課長補佐の役割は過去の業務経験等を活かして、専門性を高めるとともに、総合調整的な役割に従事することです。その際は、より長期的なビジョンを見通す力が求められます。

課長になると、所管する分野・取組のエキスパートとして、高い専門性が求められます。また、全体を俯瞰する立場にあるので長期的な視点や、世の中全般を見通す力も今までより必要になります

これがいわゆる“キャリア組”と言われる人のキャリアですね。

—“キャリア組”……聞いたことがあります。それに対して、“ノンキャリア組”というのもあるんですよね。

はい。キャリア組は、いわゆる国家一種試験を通過した人のことを指します。ノンキャリア組——いわゆる“ノンキャリ”——は、その他の職員です。“ノンキャリ”の人たちは、基本的に採用された分野でずっと働いていきます。ずっとその仕事を続けるので、その分野に関する知識はやはりずば抜けていて、よく頼らせてもらっています。

—キャリア組が“ジェネラリスト”、ノンキャリア組が“スペシャリスト”という認識であっていますか?

まさにそうですね。

—新卒では別の会社に入り、その後官僚の世界に入ってくる方というのもいらっしゃるのですか?

いるにはいると思いますが、際立って多いということはないと思います。前職は新聞社であったりと、やはり身近に政治がある人間が多いようです。

官僚に必要なものはバイタリティーとコミュニケーション能力

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—周りの同僚はどういった方が多いのでしょうか。

そもそも、今の若い世代はそもそも、公務員が厳しい目で見られていることを承知で、自ら希望して入っていますから、ある程度の覚悟を持って今の仕事に就いています。給料にしても、世の中のイメージよりは貰っていないと思います。大学の同級生には大抵負けているでしょうしね。

皆、何かしらの想いを持って働いているのです。自分もそうですが、そういう人は譲れない軸というものを持っているんですよ。「こいつ変だな」と思うような、発想がぶっ飛んでいる人もたくさんいて面白いですし、何より全員バイタリティーがすごい。一週間不眠不休で働いたあと、そのまま旅行に行ったり(笑)。

—そのぐらいの体力がないと、官僚の厳しい世界ではやっていけないのかもしれませんね(笑)。その他に、この仕事に必要なスキルがあれば教えてください。

「相手の話を正確に把握する」「それを口頭で伝えることができる」「内容を正確に文章にすることができる」。それだけだと思っています。相手の言うことを聞く。聞いて理解する。理解できなければ聞く。それを文章に落とし込む。上に上がれば説明する能力も身についてきますが、まずはこれだけ。

あとは、情報感度を高くしなればいけません。基本的に仕事の依頼はメールで来ることが多いのですが、色々な人を媒介して依頼されることも多いので、その分情報が正確でなかったり、必要な情報が抜け落ちていたりすることが多々ありますので、不足している情報を取りに行くことが必要であることが多いです。

また、世の中の動きに対して役所の中、あるいは政府の中でどのような動きがあり、それが自分の仕事にどう影響するかについて常に考え、その情報を得ることも重要です。そのような情報を得るためのネットワークというか、関係性を日頃から構築しておくことも大事ですね。

そのように得た「生の」情報は、上司に説明するときに役立ったり、物事を考えるときの理解の助けとなったりすることもあります。

—広い意味での「コミュニケーション能力」が官僚には非常に重要になってくるのですね。そしてもちろんこれは官僚だけに必要な能力ではなく、どの職種でも必要になってくると言えますね。

編集後記

東京メトロ、霞ヶ関駅。官僚たちは毎朝その駅から降りて仕事へと向かいます。

税金泥棒と言われても、業務の遅さを笑われても、彼らが昼夜問わず働くのは、“日本”が少しでもよくなるため。

国民の意見を代弁する官僚の仕事は、明日の日本をつくっていきます。

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