INTERVIEW
2016.10.25

【業界歴13年のプロが解説】5分でわかる“派遣”の基礎講座

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毎日ニュースで流れる“派遣社員”“人材派遣業”……。時事問題に関心のある方であれば、当然その実態を知っていますよね?

しかしそれ、「知っているつもり」ではないですか?例えば企業が人材派遣会社に払ったお金がどのように派遣社員に支払われているか。アルバイトと派遣社員の違いは何か。派遣先でパワハラやセクハラが起きたらどうなるか。日本の就業人口の2%を占める“派遣社員”について、本当に知っていますか?

人材派遣会社、WinJobの人材ソリューション事業部の植村謙一郎さんに、派遣の仕組みをオモテからウラまでくまなく教えてもらいました。

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派遣会社の利益率は飲食店よりもはるかに低い

—まず、派遣会社はどのようにして利益を上げているかお尋ねしてもよろしいでしょうか。

派遣会社はスタッフの方を紹介して企業様からお金をもらっています。そのうち、弊社の場合は70%はスタッフにお支払いし、残り30%のお金で社会保険や厚生年金などの負担や、スタッフが有給休暇を取った際の支払い、それから求人広告に充て、残った分が会社の利益になります。

そのため、利益率としてはかなり低い業種だと言えるでしょう。特に最近は有効求人倍率が高く、求人広告にも費用を多くかけなければなりません。そうなると、その分だけ派遣会社が受け取るお金も減るわけで、あまり儲からない業界ですね(笑)。

—派遣会社はどのようにして顧客となる企業を獲得しているのでしょう。

まずは企業が派遣会社を利用する過程を説明しますね。例えば飲食店の場合、人手が欲しければすでに働いているバイトの子に誰か紹介してくれないか頼んだり、お店にチラシを貼ったりします。それでも人が来なかったら無料で募集が出せる職業安定所に依頼します。

ただ、それではなかなか本当に欲しい層は来ない場合が多い。そこでタウンワークなどの媒体に出す。それでも人が集まらない会社が派遣会社に頼むという流れになっています。極端な例で言うと、月10万、年間120万求人広告を出しても一人も採用できない企業もありました。その点、派遣会社はスタッフが働いた分だけ企業からお金をいただくので、企業にとっての費用対効果は優れていると言えます。

意外に知らない、バイトと派遣、正社員の違い

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—基本的なことをお聞きしますが正社員と派遣社員、そしてアルバイトの違いはなんですか?

アルバイトと正社員の違いは「時間」です。そもそも『アルバイト』という雇用形態は実はないので、パートタイマー=アルバイトという定義でお話ししますが、正社員は週40時間、フルタイムで働きますが、アルバイトは基本的には週20時間以下、という場合が多いですね。

次に、派遣社員と正社員の違いは「期間」です。終身雇用は成り立たない現代とはいえ、正社員は一応、「この会社でずっと働く」という前提のもとで働きます。一方派遣社員は、同じ職場では原則3年まで。まず働く上での前提条件が異なるというわけです。

最後に派遣社員とアルバイトの違いですが、これは明確な線引きが難しいところです。ただ、一つ言えるのは、派遣はアルバイトに比べて法定福利(社会保険)が整備されている場合が多いということです。派遣ですと、労災保険に入れたり、有給を取ったりすることができます。

—派遣のほうが「きちんとした」働き方ができるというわけですね。

また、そのほかに派遣社員がアルバイトと異なる点として、アルバイトの場合は自分で仕事を見つけて、人によっては何社も面接をする必要があります。ただ、派遣社員は派遣会社に登録したら情報がどんどん入ってくる。スタッフに勤務先候補の情報を見てもらい、その中から選んでもらえます。

また、大半の場合、派遣社員のほうがアルバイトよりも時給が高いですね。

「ただのつなぎ」ではもったいない!?派遣で身につける、実績とネクストキャリア

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—ではここからは派遣社員のキャリアについておうかがいしていきます。厚生労働省の平成27年賃金構造基本統計調査によれば、男性正社員の賃金のピークが50〜54歳で平均443.4万円。一方で男性派遣社員の賃金のピークが60〜64歳で平均245.8万円。2倍近い差がついています。

これでは生涯年収も相当な差がつくのではないかと思われるのですが……。

そういったデータは確かにありますが、見方を変えるべきだと私は思います。というのは、そもそも20代から60代までずっと派遣社員一本でやっていく人というのはそれほど多くないからです。

スタッフの多くは、転職する際のつなぎとして派遣社員という選択肢を選ぶ方が多いのです。そのため、あの統計は何も、「ある1人の人間の年収推移」を表しているわけではなく、それぞれの年齢での派遣社員の年収の平均値なのです。

—なるほど。派遣業界や派遣社員は何かと偏見を持たれがちですが、そう考えるとまったく違った見方ができますね。派遣をすることは、その人のキャリアにとってプラスになるのでしょうか?

先ほども言ったように、いわゆる「雇用のクッション」として派遣に登録される方が多いので、明確にメリットになるとは言えませんね。ただ、IT業界のプログラマなどの職種に関して言えば、いろいろな業界を経験して職域を広げられるというメリットはあります。

また、一社にずっと留まっていると、どうしても「井の中の蛙」になってしまいますが、派遣を通して多くの会社の文化に触れることでソーシャルスキルを身につけることができます。

—多くの会社の文化に触れられる、というのは転職を繰り返す方も同じではないでしょうか。

転職を繰り返すのと派遣を通じて会社を渡り歩くのでは、正社員として入社しようとするときにかなり印象が違います。

中途採用の場合、履歴書でまず見るのは転職回数です。転職を何度もしている方はそれだけで会わずに落とされることもあります。しかし、派遣会社の場合、どれだけ多くの会社で仕事をしても、派遣登録先の「1社」扱い。そういった点で転職を繰り返す、いわゆる“ジョブホッパー”との違いはあります。

派遣の営業担当の給料の8割は『ごめんなさい』でできている

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—派遣のスタッフにはそれぞれ営業担当がつくと聞いたことがありますが、どのような関係なのですか?

本当に「相談役」「身内」のような感じです。履歴書の書き方から仕事で注意するポイント、想定するトラブルまで、様々な局面でフォローをします。

もしも派遣先でパワハラやセクハラのようなことが起これば、間に入って企業に注意をします。最近、勤務時間を自由に選べない「ブラックバイト」という言葉がありますが、派遣でそういったことはありえません。

また、逆に、企業側からスタッフのスキル不足についてクレームを受けることもあります。ただ、そういった場合でも、必ず「あと1〜2週間様子を見ませんか?」という提案・お願いをするようにしています。

—派遣の営業担当がいると、安心感がありますね。

私はよく、派遣の営業担当の給料の8割は『ごめんなさい』でできていると言っています。私たちは企業側からもスタッフさんからも怒られたり文句を言われたりする立場ですが、それを上手に解決に導くのが私たちの一番の仕事なのです。

景気の変動に揺られながら、骨太な会社のみが生き残っていく

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—では最後に、派遣業界全体の話についておうかがいしていきたいです。植村様はこの業界に入って10年以上。その栄枯盛衰をまさに現場で見てこられたかと思います。

派遣業界というのは、景気に一番左右される業界のひとつです。

私がこの業界に入ったのが2003年なので、もう13年経ちますが、大きな落ち込みが2回ありました。

一つは2008年のリーマンショック。なんと派遣スタッフの3分の2が切られた例もあります。多くの会社の売り上げが半減し、派遣会社の社員もリストラに遭いました。

そして2011年には東日本大震災。特に飲食関係の派遣では電気を使えず開店休業状態のお店も多く、大打撃を受けました。また、製造関係も工場が稼働できない地区もあり、派遣社員からどんどん切られていきました

逆に言えば、その二つの大きな落ち込みを乗り越えて現在も残っている企業は骨太だとも言えますね。

—これから先、東京オリンピックを控えて、ますます景気は良くなっていくでしょう。

そうですね。現在の東京の有効求人倍率は約2倍。1人の求職者に対して2つの仕事が用意されている状態です。いま、地方でも有効求人倍率が軒並み1.0倍を上回っていて、まさに“職あまり”の状態。

ただ、これがずっと続くかどうかはわかりませんから、我々も気を引き締めなくてはなりませんね。

—本日は基礎的な話から業界全体の話までわかりやすく教えていただきありがとうございました!

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